補聴器のワイヤレス通信


最近の補聴器ではワイヤレス通信機能が搭載された器種が標準的になってきています。

ワイヤレス通信と言っても補聴器に搭載されている通信システムは大きく分けて二種類。

Bluetoothや2.4G、などと言われる無線通信により主に音声を飛ばす(音声ストリーミング)を行う通信システム。

もう一つがNFMIと言われる近距離時期誘導のシステム、こちらの通信システムは外部機器との接続ではなく両耳で補聴器を使用する場合の両耳間通信に使われています。

左右の補聴器がお互いに使用環境の音声情報を通信しあい、補聴器に搭載されている雑音抑制・指向性マイクなどの情報を左右間でやりとりし各機能がバランスを考え変化したり音声加工のバランスを変えたりします。

 

この二つの通信システムが両方搭載されているものとBluetoothや2.4Gのみが搭載されているものがあります。

 

1、「Made for iPhone」と言われる補聴器

近年発売された器種では多くなっている「Made for iPhone」と表記されている補聴器。

これはApple社の端末

iPhone 4s 以降 ・i Pad Pro ・ iPad Air 以降 ・ iPad (第 4 世代) ・ iPad mini 以降 ・ iPod touch (第 5 世代) 以降

と補聴器が直接通信する機能が搭載された器種になります。

iPhone と通信設定(マッチング)すれば電話の音声を直接両耳の補聴器から聞くことができ、通話音声以外にも端末アプリから出る音声(音楽・動画・ゲームなど)も直接聞くことが出来ます。

音声を聞く(音声ストリーミング)以外にも補聴器のボリュームを変えたりとリモコンとしても使用可能です。

通信接続に中継器なども必要ないのでその点は便利です。

詳しくはApple社のサイト

2、補聴器本体の通信

〇操作性の同期
操作性の同期とは、左右の補聴器のボリューム・プログラム変更などが、左右の補聴器で通信し同期します。
従来は右のボリューム、左のボリュームと別々に操作が必要でしたが、左右が同期することで、右のボリュームを上げれば左のボリュームも同等に変化するので操作性の簡略化・操作による左右バランスのズレを無くす事が出来ます。
しかしデメリットとしては、片方だけボリュームを上げるといった操作は同期するとできないので設定には注意が必要です。
また小型の補聴器ではボリュームを付けるスペースが無い場合などでは、ボタンを付ける事で左右のボタンで右はボリュームを上げる、左はボリュームを下げるなどの操作も可能になりました。


〇機能の同期
これは操作性の同期より複雑な機能になり補聴器のクラスで言うとミドルクラス辺りの器種に搭載されている事が多いです。

機能性同期とは、簡単に言うと補聴器に搭載されている各機能が両耳通信することでバランスを自動的にとる機能。

現在の補聴器に搭載されている機能は、自動で変化する機能も多く有ります。

 

●環境適応型雑音抑制
使用環境の雑音レベルや音声信号などによって自動的に雑音抑制の強度を変化させています。
 

●指向性マイク
マイクの感度を全方位(無指向)、正面(指向)とやはり環境の状態で自動的に変化させています。
マイクの集音範囲や周波数別に範囲を変更する(マルチバンド)など同じ指向性でもさまざま

 

●環境プログラム

 プログラム(調整)を環境の状態で自動的に変化させている機種もあり、いろいろな機能が自動的に使用環境では変化しています。

従来の補聴器では、日常環境で使用している事を考えると左右の補聴器に入る音声情報は違います。

図のように左側が車道の場合は、左の補聴器に入る音は車の走行音(雑音)成分が多くなるので、左側の補聴器は雑音抑制が強くかかったり指向性マイクが集音範囲を狭めたりします。

対して右側の補聴器には左側程雑音は入らないので、左側の補聴器とは機能の働きは違ってきます。

その結果、左右の音声バランスは変化してしまうため音の方向感や距離感がつかみにくくなる傾向が強くなり音源定位がしにくい状態になってしまいます。

 

 

 

そういった点をなるべく改善しやすいように考えられたのが“音空間認知” などと言われる機能です。

2018年頃から各社補聴器に空間認知機能と言われる機能が搭載される器種が増えてきています。

こういった機能により、音の方向感や距離感を左右の補聴器がバランスをとり強調したりします。

3、補聴器と外部機器との通信

先にあげた「Made for iPhone」以外の補聴器でもBluetoothお使用する事で外部機器とのワイヤレス通信が可能です。

ただ多くの場合は直接通信ではなく、中継器のように外部機器と補聴器をつなぐ通信機器が必要になります。

左図はシグニア補聴器)のワイヤレスになります。

中央にあるeasy Tek boost と言われる中継器を首から下げることで外部機器との通信が可能になります。

 

このような中継器を使用することでBluetooth機器と接続する場合が多くワイヤレス機能は各社それぞれの器種に対応した中継器が必要になります。

 

また近年(2022年現在)では首掛け式の中継器は少なくなりワイヤレスマイクがBluetooth機器との中継機能を兼用しているのも多いです。

 

中継器を使用しないで直接外部のBluetooth機器と接続可能なメーカーも一部あり。

補足として

「Made for iPhone」の機能がついた補聴器でアンドロイド(Android)端末のスマートフォンを使用する場合

アンドロイド端末では直接通信する音声ストリーミングは使用できない場合が多いです。

そのためApple社ではないスマートフォン(アンドロイド)に接続して使用する場合はやはり中継器を着ける必要が出てくる場合も。

 

また最近(2022年)ではAndroid端末でも対応する器種も出て来ていますが、Android端末側がASHA(Audio Streaming for Hearing Aid)対応となっていないと補聴器側がAndroid対応器種でも安定的なストリーミングが難しいのが現状です。