指向性マイク編について

現行モデルの補聴器では一般的な機能となってきた指向性マイク。
前回説明した雑音抑制と同じように、指向性にもいろいろな違いが存在しています。

まず指向性マイクとは?
指向性マイクの基本的な考えは、従来のマイクでは騒音下などで周囲の音を全て拾ってしまい、話者の声を聞き分けるのが困難になります。
それを改善する為に、マイクの集音範囲をしぼり余分な音を低減させて聞き易くするといった感じです。

ではマイクの集音範囲と言ってもピントこないと思うのでこちらを見て下さい。

参考資料(SIMENSE社HPより)
これは左耳、裸耳の集音範囲を現しています。
黒線:1KHz、橙:2KHz、青:4KHz

耳穴型の無指向性補聴器を左耳に装用した場合


正面0度、反時計回りで270度、180度の位置では変化がなく、正面、左真横、後方と音を拾う状態になります。

この集音範囲をポーラパターンと言います。
つまり両耳聴では、全周囲の音を拾う状態になります。
この場合、静かな環境では問題はないですが騒音下ではどうでしょうか?
例えば、喫茶店やレストランで会話をする場合を想像してみて下さい。
全方位の音を補聴器のマイクで拾い、同じように増幅してしまうと…
正面の話者の声も、横のテーブルで話している声や音も増幅されてしまい、聞分けし難い状態になってしまいます。

それを改善する為に、考案されたのが指向性マイク。
指向性マイクは正面方向の集音を優先させて、横方向や後方の音を拾いにくくする事で、正面の話者の声を聞取りしやすくするといった考えです。

指向性マイクの歴史は、記憶に有る限りでは、90年代半ばから意外と古くから耳掛型の補聴器には搭載されていましたが、搭載器種も少なく現在の指向性マイクとは比較になりませんでした…

では指向性マイクの基本的動きは、


この2パターンが基本的な指向性マイクのポーラパターンとなります。

装用者を中心として円状に全周囲の音を拾う状態が、無指向性。
正面方向を中心として後方が狭い、横方向が最も狭くなる状態が指向性。

集音パターンをさらに増やした状態が、

この4パターンの集音範囲。
基本ポーラパターンはこの4種類が考えられていて、騒音の入射角やレベルによって、補聴器がパターンを変化させていきます。

このように集音範囲の変化パターンに違いがあります。

次に違うのが、指向性マイクの自動的な部分。

・まず一番簡単な部分での違いは、無指向性と指向性の切換え。
マイクの切換えが使用者本人が手動で切換えるか、環境に応じて自動的に切り換るか。
現行ではほとんどが自動切換えになって来ていますが、一部自動対応しない器種も有ります。
(自動切換えの器種も設定で手動対応も可能)

・次に、指向性のポーラパターンが固定型か追尾型か、
指向性に切り換った場合のポーラパターンが、1種類の状態で固定されるのか、それとも雑音源移動した場合に最適なポーラパターンに変化するのかに違いが有ります。

・次に指向性処理チャンネルの違い
指向性に切替り変化するのが、低音〜高音域まで全ての周波数帯(1チャンネル)で切換り処理されるのか、それともマルチチャンネル式と言って、周波数ごとに無指向性、指向性、指向性のポーラパターンを変化させるのかに違いが有ります。
マルチチャンネル式の方が、より多くの雑音源に対応すると考えられていたり、雑音成分が少ない周波数帯は無指向性を保つので、聞こえの安定性も優れていると考えられています。

・次に指向性時の集音範囲の絞り角の違い
先に挙げた4パターンのうち正面だけになるパターンが有りますが、さらに正面の集音範囲を狭めるタイプも有り、より正面方向を特定した状態になります。

・次に集音方向の選択
今まで挙げたパターンは、話者が正面にいる事を前提として効果が期待できますが、そうではないパターンも日常では考えられます。
例、横並びに座る場合、電車や車など

こういった場合は、正面に集音範囲を絞ってもかえって横の人の声が聞き難くなってしまいます…
それを解消するために、右・左・後方と集音範囲を選択出来るタイプが有ります。
さらに手動で選択するか、補聴器自体が話者の位置を特定し自動的に話者の方向に集音範囲を向けるかに違いが有ります。

この技術は最近のタイプで、今までの指向性は雑音源を検出する働きでしたが、このタイプは音声の方向を検出する働きと、逆転の発想です。

先に挙げた順に機械的には複雑な処理を行うので、金額も高額モデルが搭載する感じになります…

一つの機能でもかなりの種類に分類されていますので、指向性マイクが搭載されているから、どんな雑音下でも安心なわけでは有りません…

まとめ
指向性マイクは、補聴器の機能では最も聞取りやすさに貢献できる機能と考えられていますが、メリットだけでなく勿論デメリットも有ります。
例えば、集音範囲を変化させる事で、特定方向からの感度が下がります。それにより方向感がわかり難くなったり、横や後方からの呼びかけに気付き難くなる事も考えられます。

さらに音量保証の面でも、指向性に切換った状態だと無指向性の状態に比べ、低音域の音量も減衰してしまう傾向が強く、音量感を必要とする伝音性難聴の人や高・重度難聴の人には合わない場合も有ります。

それと注意は、補聴器の片耳装用の場合は効果が少なく、減衰による聞取りの悪化が基本的に考えられているので、片耳装用の場合は指向性を避けた方が良いかも知れません。