皆さんが思う雑音抑制…
雑音が入らなくなる、人の声だけが聞こえる、などと思いがち…
確かにメーカーのカタログなどの説明を見ると、あたかも“雑音が入らない”と期待をしてしまいますが表記する言葉のように “抑制” であり消し去るわけではありません。
では雑音抑制(ノイズリダクション)の機能はどのように働いているか?
(GNヒアリング 米国より一部引用)
上記図の説明
上段左:Original speech signal が会話音声 上段中心:Signal with in noise が実際の音(音声と雑音がある状態)
上段右:Original Noise signal が雑音
実際の環境では人の話し声以外に周囲の環境音が実在します。
そのため周囲の環境音と聞きたい人の声が混ざることで難聴者にとっては聞き取り難い状況になりやすく、また環境音(雑音)が不快に感じることも。
そんな問題を少しでも解消する機能が雑音抑制(ノイズリダクション)となります。
但し聞き取りやすさの向上より効果としては快適性の重視が大きい機能かと個人的には考えます。
下段中心:Signal treated with NoiseTrackerⅡ (ノイズトラッカーⅡはGNヒアリング社のノイズリダクション機能を表す機能名。
つまり上段中央に表示されている周囲の音と会話音が混ざっている実際の音が雑音抑制をかけることで下段中央のように変化することを表しています。
この図がもっとも基本的な雑音抑制を現した図かと思います。
ギザギザの部分はスペクトル変化(音の変調、音の強さの変化)を現しています。
上段右図の黒いギザギザが雑音成分、上段左側赤いギザギザが音声成分となり、両方が混じりあった状態が上段中央となり、雑音抑制を働かせると下段中央のように変化するわけです。
中央下段の図からみてわかるように黒いギザギザの部分がかなり減少しているのがわかるかと思われます。
こういった雑音抑制機能で基本的に考えないとならない問題としては、定常音(一定の音で持続的な音)を雑音として認識している。
つまり、エアコンーやモーターの音のように、連続的で一定の音の強さで補聴器に入力される音を雑音と定義してます。
もう一つが人混みやレストランなどの周囲のガヤガヤした雑音(変調的な雑音)と大きくわけると二種類あり。
機械的な性能で考えると、定常音的な雑音の抑制は容易で比較的安価な器種でも搭載されていますが、変調的雑音に対しては高度な検出方法が必要となるためある程度高価な器種でないと対応が難しくなるかと思われます。
ではどのように補聴器は雑音を定義し検出しているのか?
例えば、入力音圧レベル(音の大きさ)による振り分け、入力音圧の変調パターンによる関連付、周波数帯域別の変動検出、近年では指向性マイクの機能や両耳間でのワイヤレス通信による左右間の入力音情報差なども検出アルゴリズムに組み込まれているようにも考えられ、機械的にもかなり高度で複雑化しているのが実際です。
ほとんどのメーカーカタログに記載されているのは雑音抑制と言う表記だけなので、実際その器種がどんな雑音抑制の検出で効果が期待出来るのかはなかなか判断するのは難しく、それを簡易的に表しているのが環境別の対応表記になるかと思います。
基本的にエコノミーやバリューと言うクラス別表記の器種では、家の中や静かな環境・外出時や3人程度の会話などが対象となっているかと思いますので、人混みのガヤガヤした変調的な雑音に対してはあまり抑制効果は期待できなくなります。
こういった部分を考え、自身がどんな環境で過ごすことが多いのか? またどんな環境での聞き取り改善を期待するのか? をよく考えて器種・クラス選定が必要となります。
注記:デメリット
雑音抑制は必ずしも雑音成分だけを抑制するとは言えません。
一部の音声成分も抑制したりする為、聞取り難さにつながる場合も有ります…
衝撃音抑制機能とは、通常の雑音抑制とは違い細かな衝撃音(食器のカチャカチャした音や紙のパリパリした音)
を抑制する機能になります。
(これも雑音抑制のカテゴリーになります)
近年の補聴器には段々と標準的に搭載され始めていますが、各補聴器メーカーにより機能名称が違い
(アンチショック、サウンドリラックス、サウンドスムージングなど)
少しわかりにくく…
この機能も若干メーカーにより検出・作動アルゴリズムに違いがある様子です。
上記図のように元の音は上段、四角の中で急激に波が高く検出されている部分が、下段のように衝撃音抑制が働く
と抑えられます。
名称から考えると雑音抑制とは反対の意味に感じられますがこれも雑音抑制機能のカテゴリーになる機能です。
補聴器メーカーによりやは機能名に違いがあり語音強化、語音強調、スピーチエンハンサーなどがあります。
先に挙げた雑音抑制と違うのは、簡単な定常音抑制だけでなく、マルチチャンネル処理により、各周波数帯別で検出を行い、抑制(下げる)だけでなく、強調(上げる)する周波数帯と周波数ごとにバランスを変化させているパターンが多いです。
因みにこの呼名の機能は、人混みの雑音にも対応し変化します。
単純に考えると低周波数帯域では雑音成分が多いため抑制を行い、高周波数帯域では音声成分が多いため強調する働きが多いです。
この機能に関しては周波数帯域別に検出する必要があるため、効果的に作動する状況を考えた場合はマルチチャンネルと言われる、その器種のチャンネル数が多い方が恩恵も得られる可能性が高く考えられます。
デメリット
周波数特性自体が環境で変化するので、部分的に音質変化を感じたり、音量保証の問題が考えられます。
この機能は名称そのまま風の音を抑制する機能となります。
あまり風の音と聞いてもピンと来ないかたも多いかも知れませんが、大きなビルの近くや自転車に乗った時など
補聴器のマイクに風が当たるとボボボボ…とかなり大きな音になります。
例、カラオケなどのマイクに息を吹きかけるとやはりボボボボ・・・と音がするのと同じ状態。
この機能も近年では搭載する器種は多くなりましたが、やはり検出方法・作動のアルゴリズムは微妙に違いがある様子です。
基本的にはマイクに入力される音の周波数成分と強さで風の音?と判断しますが、近年の器種では指向性マイクにより、フロント(前方)マイクとリア(後方)マイクでの入力差などから風の音を特定している様子です。
注記:デメリット
風切り音を検出した場合には補聴器の音量も下がる事が実際には多く、風の強い場所での会話聞き取りにはやはり改善が難しい場合が多いように感じます。
最後に
このように雑音抑制機能のカテゴリーに含まれている機能も色々あります。
また同じ機能名称でも器種のクラス(価格)別で抑制の強さや働きも違いがあるので、雑音抑制がありと…
記載されていてもその効果は器種により大きく差が生じます。