1、雑音抑制について  
皆さんが思う雑音抑制…
雑音が入らなくなる、人の声だけが聞こえる、などと思いがち…
確かにメーカーのカタログなどの説明を見ると、あたかも“雑音が入らない”と期待をしてしまいます。

では雑音抑制の機能はどのように働いているか


補聴器メーカー(デェスティニー社HPより)

この図がもっとも基本的な雑音抑制を現した図かと思います。
ギザギザの部分はスペクトル変化(音の変調、音の強さの変化)を現しています。
中心部分の一定幅で入力されている部分が雑音で、図の右方向で大きく変調している部分が会話となります。
雑音抑制がOFFの状態がグレーの部分(元の音)
雑音抑制がONの状態がブルーの部分(補聴器の増幅音)

ONとOFFの変化でわかるのは、中心に有る雑音の変調幅が小さくなっています。
つまり雑音が小さくなっている状態です。

ここまでで考えると、雑音抑制は的確に雑音を小さくしていると評価出来ますが…

考えなければならないのは、雑音の定義になります。
補聴器自体は雑音か音声を明確に判別しているわけでは有りません。

この基本的な雑音抑制では、定常音(一定の音で持続的な音)を雑音として認識しています。
つまり、エアコンーやモーターの音のように、連続的で一定の音の強さで補聴器に入力される音を雑音と定義してます。

つまり人混みやレストランなどの周囲のガヤガヤした雑音は抑制されない事になります。

皆さんが考える雑音と補聴器が認識する雑音ではこのようなズレが生じてしまい、思ったより雑音が気になるなんて事がおきてしまいます。


では人混みの雑音は抑制出来ないのでしょうか…
実はこれも抑制は可能です。

但し先に挙げた定常音検出による、抑制方法では出来ないので違う方式の抑制装置になります。

検出方式にはいろいろな方法が有ります。

例えば、入力音圧レベルによる振り分け、入力音圧の変調パターンによる関連付、周波数帯域別の変動検出、などなど補聴器のマイクに入力される音の情報から雑音をどのように定義付するかが問題になります。

ほとんどの器種やカタログに記載されている、雑音抑制…
どのような音を雑音として抑制するのか意識する必要があります。

デメリット
音声成分も抑制したりする為、聞取り難さにつながる場合も有ります。


2、雑音抑制機能のカテゴリーに含まれる機能

雑音抑制と一般的に言われる機能も違った呼名でいろいろな目的に使用されています。

・語音強化、語音強調、スピーチエンハンサーなど
この手の呼び名の機能も雑音抑制機能の一つです。
先に挙げた雑音抑制と違うのは、簡単な定常音抑制だけでなく、マルチチャンネル処理により、各周波数帯で検出をして、音量抑制(下げる)周波数帯と、上げる周波数帯と周波数ごとに音量バランスを変化させているパターンが多いです。
因みにこの呼名の機能は、人混みの雑音にも対応し変化します。

デメリット
周波数特性自体が変化するので、部分的に音質変化を感じたり、音量保証の問題が考えられます。

・アンチショック、サウンドリラックス、サウンドスムージングなど
これも雑音抑制のカテゴリーになります。
機能の働きは、食器のカチャカチャした音や紙のパリパリした音を抑制します。

機能OFF

機能ON (SIEMENS社HPより)

大きく振幅を示す部分がカットされているのがわかると思います。

日常生活ではこれらの細かい響き易い音が比較的多いですが、従来の雑音抑制機能では未対応の部分でした。

デメリット
音声ディレー(遅延)により、残響感的な音質劣化や子音成分の抑制による聞き難さなどが考えられます。

・風切音抑制、ウインドマネージャーなど
その名の通り、風切音(ボボボー)を抑制する装置です。
当初の器種では、マイクに入力される音圧的部分で判断していましたが、最近の器種では指向性マイクのフロントマイクとリアマイクに入力される信号ズレから検出している物も有ります。

デメリット
音量レベル自体を下げてしまう物が多く、風切音が小さくなり快適性は上がりますが、聞こえは低下してしまう…


まとめ
各社、あたりまえの様に言われる、雑音抑制機能ですが…
実は明確な作動原理や定義付は公表していない場合も多く、厳密に分類するのは、販売する側もひじょうに難しいのが現状かと…

メーカーのHPなどを見てもほとんどのメーカーは機能説明をシッカリしていません…
一番良く説明しているのが、SIEMENS社のHP
興味ある方は覗いてみて下さい!
http://w1.hearing.siemens.com/jp/01-professional/02-bestsound-technology/02-sound-comfort/02-suppressing-unwanted-noise/01-speech-enhancement-and-noise-reduction/senr.jsp

抑制機能を考える場合は、自身の生活環境やどんな音がわずらわしく感じるかを明確にする必要が有ります。

雑音がうるさいと言っても、人それぞれ雑音の定義が違います。
その人が感じる雑音の定義と、補聴器が認識する雑音の定義が一致して始めて効果が出る状態になります。

それとどんなに高価・高性能の器種でも、雑音が入らない様にはなりません…
個人的に考えると、雑音と言われる環境音も聴覚維持の面で考えれば、音声刺激の一つだと思います。
抑制を強くかければ、聴覚の刺激量も少なくなる…
そういった点から考えると、不用意に抑制をかけ過ぎるのも問題なのかも知れません。

それとこれらの機能は聞取り易さと言うよりは、快適性に関連する機能と考えられます。
雑音の感じ方も人それぞれなので、あまり雑音に対する不快感がなければ、それ程強力な抑制装置は不要と判断できるかと思います。