フィードバックマネージャーについて


補聴器の使用者で結構悩む人が多い問題、ハウリング!!

フィードバックマネージャーは単純にハウリングを止める機能と思っていませんか?
確かにハウリングを起し難くはしますが、完全に止まる機能では有りません…

そしてこの機能も各器種、各メーカーによって違いが有りそれによってメリット・デメリットが有ります。

1、補聴器に搭載されているフィードバックマネージャーの基本。


多くのメーカーが基本的に使用している方法としては、逆位相式と言われてます。
一般的に逆位相と言うと、最近ではヘッドホンなどで知られている”ノイズキャンセラー”に使用されている技術。

元の消したい信号に対して、元の信号の反対(逆)の信号を合わせる事で、元の信号を軽減(消えるわけではないので)させる…
これが逆位相と言われる方法です。


(デスティニー補聴器HPより)

つまりハウリングする“ピーー”音に対して、補聴器が位相信号を発生させて“ピーー”音を消す様な働きをさせています。

そのため最近の補聴器ではハウリングが起きても“ピーー”と言う音が出にくく、ハウリングしていても“ジャリジャリ”といった感じのチョット違った感じの音がする場合が多いです。

デメリット
ハウリングを抑える力は比較的弱い。
補聴器のハウリング音と類似した音(楽器の音や電子機器の音など)がすると誤作動を起こし、補聴器自体が位相音を出して発信する。

しかしながら逆位相だけでは実際に補聴器のハウリング音を抑えるのは難しく、現実にはフィルターを形成してハウリングが起きないように、音量を下げる動きをしている場合も多いです。



グラフの青線:補聴器の増幅音量
グラフの赤線:フィードバックリミットフィルター
(リミットラインはこれを超えるとハウリングが起きる境界線)



この様に赤線を補聴器の増幅音が超えてしまった状態がハウリングを起こしている状態になります。

こういった事を避けるため



フィードバックリミットフィルターに補聴器の増幅音量が近づくと、増幅音量自体を部分的に下げて、ハウリングが起きないようにしています。

ではフィードバックリミットフィルターはどの様に決まるのでしょう?

通常この機能を正確に作動させるには、フィードバック測定を行います。
実際に補聴器を耳に装着した状態で“ジャーー”とか“ピ・ピィ・ピー・ピーー”とか測定音(結構大きい音…)を出し、実際の装着状態でどの程度音が漏れるかを測定します。


(SIEMENS社のフィードバック測定画面)

グラフの下側の線が、補聴器使用状態の増幅音量
上段の線が、フィードバックリミットフィルターになります。

つまり補聴器の増幅音量がリミットフィルターを超えた場合はハウリングしてしまうので、この測定状態だと2KHz付近で2本の線かなり近い状態になっているので、ハウリングのリスクが高く、その付近の音量が下げられてしまう可能性も高い事になります。

この測定はある意味、耳掛型補聴器で有れば、耳栓の形状と耳のフィット感、耳穴型であればシェル(耳型)と耳のフィット感が合っているかも客観的に評価出来ます。

測定結果が悪い場合は形状の再作をその時点で考える必要が出て来ます。

ここまでがほとんどの器種で使用されているフィードバックマネージャーになります。

デメリットとしては
逆位相だけの器種に比べハウリングは起きにくくなりますが、ハウリングが起きやすい高音域を下げてしまう可能性が有るので、低音域は増幅され、高音域は下がるといった感じになり明瞭感が低下する可能性が考えられます。

2、進化型フィードバックマネージャー


上記2種類の方法でもハウリングを抑えるのは限界があり、さらに改良されてきています。

・フラッグ式?
この方法は上記もフィードバックマネージャーだと誤作動を起こす可能性が有るので、補聴器の増幅音に特定の信号を付着させた様にします。
つまりハウリングの原理は、補聴器が増幅した音が、再度補聴器のマイクに入力されてしまうと起きる現象なので、フラッグが付着した信号が入力された場合はハウリングと判断して、フィードバックマネージャーを作動させますが、フラッグが付着してないハウリング音に類似した音が入力された場合は作動させないように働きます。
そのため、外部からの類似した音が入力されても誤作動が起きにくい状態になります。

・両耳通信機能を応用した方式
近年の補聴器には通信機能が搭載された器種も増えてきてます。
その通信機能は補聴器の左右間通信もしている場合も多く、左右の補聴器に入力される信号でハウリングかどうかを識別する方法。
右の補聴器でピーーと音が入力された場合は、左の補聴器にはピーーと音の入力は検出されません。
そのため右のピーー音はハウリング音と認識します。
逆に左右の補聴器が同じようにピーー音の入力を検出した場合は、ハウリングではなく、外部から類似した音が入力されたと判断します。
これもフィードバックマネージャーの誤作動を防ぐことが可能になります。

・周波数シフト式
これは補聴器がハウリングを起した場合にただその周波数帯を下げるのではなく、補聴器で再生している周波数帯域全てをずらすように働きます。
一般的にハウリングが起きる周波数は特定周波数帯域で起こります。
例えば、3000HZで音が漏れてハウリングが起きた場合、全体の周波数帯域を200Hz高音域にずらすと、漏れていた周波数の増幅音量が違う周波数帯に移動するのでハウリングが止まります。

この方式は従来のフィードバックマネージャーよりも強力に抑えますが、周波数帯域を瞬間的にでも移動させてしまうので、音質的に劣化します。


まとめ
現状多くの補聴器にフィードバックマネージャーは搭載されていますが、厳密にどの様な方式で行っているかは分からないのがほとんどです…
ただ先に挙げた逆位相とハウリングリミットフィルターを形成するのは基本的に同じでと思われます。
そしてフィードバックキャンセラーが作動している状態だと、音質劣化や残響感といった違和感が起きる場合も多いです。

注意としては、基本ハウリングは音漏れです!
つまり常時起きるハウリングの場合は、耳栓やシェルの形状を耳の形にフィットさせる事が原則的で、フィット感が悪い場合はフィードバックマネージャーで抑えるのではなく、物理的な形状を再加工しフィットさせる事が重要です!!

フィードバックマネージャーの本来の用途として考えられているのは、電話の受話器をあてた時、口を大きく開けた時、帽子をかぶった時、などなど…
特定の場面・状態でハウリングを起してしまう場合に有効的と考えられています。